K-POPアイドルBTSはなぜあんなにアメリカで人気なの?

2013年、まだ無名だった小さな事務所から7人組のヒップホップグループ、BTSが韓国でデビューしました。当時の彼らを見て、4年後にビルボードに行くまでのグループになるなんて誰が想像したでしょうか。
 
2017年にBTSが初めてビルボードで受賞した時、アメリカはおろか、韓国にさえその成功と人気がどこからやってきたのか正確に知っている人はほとんどいなかったと思います。
 

 
Asian Bossが制作した動画を見ると、韓国国民にとってBTSの米国での成功は少し意外なものであったということがわかります。「アメリカ人がBTSを好きだと初めて聞いたときは驚いた」「他のアイドルグループのようにアジアでは人気が出ると思っていたけど、アメリカでウケたというのは予想外だった」などの意見が。
 
でも実は、事務所は「アメリカに進出させる」という明確なビジョンの元にBTSを結成させ、しっかりと戦略を立てていたのです。そしてメンバーたちは今までコツコツとやるべきことをこなしてきました。
 
つまり、BTSが世界で受け入れられたのはただの偶然ではなかったのです。

 

「逆輸入方式」で海外へ

彼らが所属する事務所、ビッグヒットエンターテイメントのパン・シヒョク代表は「逆輸入方式」でBTSの海外進出を狙いました。この「逆輸入方式」とは、国内ではまだそれほど認知度が高くないアーティストを先に海外に連れていって地位を築き、その成功を利用して韓国市場での影響力を高める戦略です。
 
BTSがデビューした2013年にはすでに東方神起や少女時代、BIG BANGといったグループがK-POPというジャンルを確立していました。K-POPが韓国とアジア諸国である程度の規模を持っていることを理解していたパン代表は、数年前から西欧の音楽市場を細かく分析し、韓国や他のアジア圏の国よりもまず米国進出を優先させたのです。
 
この後、次々と似たようなアイドルグループがデビューしもはや区別がつかないレベルの飽和状態に陥ったK-POP市場。そんな中で差別化を図るため、今までどの韓国エンターテイメント事務所も試したことのなかった「逆輸入方式」を実行したビッグヒットは、まるでその流れを予知していたかのようにも思えます。

 


 

米国のK-POPファンが好むサウンドと歌詞

K-POPコラムニストのJakob Dorofによると、2014~2015年のK-POPのサウンドは欧米の基準で見るとかなり時代遅れだったと言います。そこでBTSは、韓国とは違う文化を持つ米国の若いK-POPファンたちが好むサウンド、つまりヒップホップで勝負に出ました。(ビルボードのランキングでも上位にいるのはいつもヒップホップやラップ。)
 
また、もう一つ注目したいのは歌詞です。これまで社会的な問題に訴えかけるK-POPグループがいなかった事実を見逃していなかった彼らは、歌詞の中に社会的なメッセージを積極的に取り入れてきました。
 
例えば、オバマ大統領が演説の最後にマイクを落とす姿にインスパイアされて生まれたという「Mic Drop」は、社会的階級の違いによって生じる侘しさや怒りを中小事務所からデビューして今まで走り続けてきた自分たち自身になぞらえて歌っており、「고민보다GO」は、最近の流行語である「YOLO」や「タンジンジェム(=ささやかなものにお金を使い財布を空にする楽しみ)」という言葉を通して現代の若者の生き方や価値観について歌っています。
 

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音楽に社会的なメッセージを込めることが主流のカルチャーの中で育った欧米のK-POPファンにとって、こうしたBTSのストレートな歌詞は心に刺さるものがあったのではないでしょうか。

 

SNSをフル活用するデジタルネイティブなアイドル

BTSの成功を語る上でSNSの存在は無視できません。特にYouTubeやVアプリといったビデオコンテンツに力を入れており、様々なコンテンツを定期的に発信しています。こうした動画コンテンツに力を入れる理由は、YouTubeやNaver検索に馴染みのある若いBTSファンに一番リーチしやすいプラットフォームだから。また、国内コンテンツにアクセスしにくい海外のファンたちにもアピールできる最良の場所と言えます。
 
ちなみに去年からARMY(BTSのファンの通称)になった妹は、Vアプリの生配信が楽しみで仕方ないそう。私も以前、彼女が見ているのを覗き見したことがあるのですが、その内容に驚きました。例えば、つい先日はメンバーのジョングクが日本でのファンミーティングイベントの後ホテルの部屋から生配信していました。それも5分程度のものではなく約1時間近くも。まるで1対1でテレビ電話でもしているかのように、彼はカメラの前で夕食を食べながら他愛もない話をしたり、生歌を披露したり、視聴者からの質問に答えたりするのです。
 
さらにBTSは活動がない時もツイッターやインスタグラムを通してメンバーたちの日常や自分たちが作った曲を頻繁に発信してきました。このように自らがコンテンツとなってファンとマメにコミュニケーションを取ることがコアなファン層を増やす要因となっているのでしょう。

 

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「人間味あふれる姿が僕らの強み」

アイドルなら完成された理想の姿だけをファンに見せるのが普通だと誰もが考えているでしょう。なぜならそれがみんなに期待されているアイドルの姿だからです。けれど、BTSはありのままの姿をファンと共有し続けています。それはビルボードに認められ、「世界のBTS」と呼ばれるようになった今でも変わりません。
 
YouTubeがBTSの活動の裏側に密着した「Burn The Stage」では、メンバー同士がダンスの振り付けを巡って口論になったり、思い通りのパフォーマンスができず落ち込んでいる姿などが映し出され、ファンに衝撃を与えました。
 


 
もしかしたら、そういった部分を見せてしまうことにはリスクがあると考える人もいるかもしれません。イメージと違ってファンをがっかりさせるんじゃないかとか、嫌われてしまうんじゃないかとか。でも私は、ステージ上の顔とはまた違うリアルな素の部分も全てさらけ出すからこそ、もっと深いレベルでファンと繋がることができるのではないかと思うのです。
 
同番組の中で「人間味あふれる姿が僕たちの強み」というリーダーRMの言葉がとても印象的でした。彼はさらに「僕たちも辛い時イラついたり泣いたりすることもある。そういう部分も見せていくべきだと思う。それでこの人たちも同じ人間なんだなって思ってもらえたらいい。」とも語っています。これがBTSの戦略なのかどうかはわかりませんが、彼らの大きな魅力となっていることは確かでしょう。
 
ARMYの妹はよく「世界に羽ばたいていく彼らに対してどんどん遠い存在になっていってしまうようで寂しい」と言います。けれど、相変わらず彼らはありのままの姿を見せてくれるから、身近な存在に感じられるしずっと追い続けたくなるんだそうです。
 
すっかりK-POP離れしていたのに、妹の影響でBTSにハマりつつある私。これからもどんな姿を見せてくれるのか楽しみです。
 
アイキャッチ画像:@billboard

 

ABOUTこの記事をかいた人

Mayuko

1991年生まれ。大学卒業後ニューヨークに留学中にKaekoとHEY SISTERを立ち上げ、ライター活動を開始。帰国後は当サイトを運営する傍らフリーランスライターとしてファッション、ビューティー系媒体で翻訳や寄稿を行う。海外のコスメ集めが趣味。