寺田倉庫の新ミュージアム「WHAT」に行ってきた!コレクター目線で現代アートを愉しむ

2020年12月12日(土)に東京・天王洲にオープンした現代アートのコレクターズミュージアム「WHAT(ワット)」。

寺田倉庫が様々なアートコレクターから預かり保管している貴重な作品を展示しているユニークな新アートスポットです。

今回の記事ではオープン前日に行われたメディア向け内覧会の様子を詳しくレポ。

現代アートのコレクターズミュージアム「WHAT」

「WHAT」は運営元である寺田倉庫が、日本を代表するアートコレクターが独自の価値基準で集めた作品たちを預かり展示しているミュージアム。「WHAT(WAREHOUSE OF ART TERRADA)」という名前には、「倉庫を開放し、普段見られないアートを覗き見する」というユニークなコンセプトが込められています。

東京モノレールの「天王洲アイル駅」から徒歩で5分ほどの立地です。JR「品川」駅からは港南口から出て徒歩で15分ほど。
 

館内の展示スペースは1階と2階に分かれています。
 

オープニングは高橋龍太郎&奈良美智作品のコレクションを展示

2021年5月30日まで開催される「-Inside the Collector’s Vault vol.1-解き放たれたコレクション」展では、精神科医であり現代アートコレクターでもある高橋龍太郎氏とA氏(匿名)の2人が、それぞれの視点や価値観に基づいて収集してきた約70点もの作品が展示されています。
 

まずは高橋龍太郎氏のコレクションから拝見していきましょう。

パンフレットに記載されたバーコードを読み取ると音声ガイドが楽しめます。高橋龍太郎コレクションは、ご本人がそれぞれのアート作品について解説してくださっているので、そちらも要チェック。
 

東京・蒲田にあるタカハシクリニックの院長でもある高橋龍太郎氏は、1997年から本格的に現代アートのコレクションを開始し、これまでに国内外21館の美術館等で展覧会を開いてきました。今回の展覧会は「描き初め ─コレクションはいつまでも若い─」と名付けられ、若手作家の作品を中心に展示しています。コロナ禍で美術館と映画館に足を運ぶことだけが唯一の楽しみだったという高橋氏の渇望感が、このテーマに込められているのだそう。
 

川内理香子《limb》(2018)
水戸部七絵《DEPTH》(2015)
川内理香子《Forest of the night》(2019)

1階の展示スペースで印象に残ったのは、川内理香子の《Forest of the night》。食と身体と神話の世界が融合した人間の原風景が表現されています。高橋氏は2016年の「ART TAIPEI」で彼女の作品に出会い、何枚もの作品を購入したのだとか。
 

続いて、2階の展示スペースへ移動しましょう。階段を上がってすぐ、高橋氏ご本人の肖像画がお出迎え。はじめはてっきり写真かと思ったのですが、肖像画でした。高橋氏が2018年の東美アートフェスで出会った野澤望に依頼し1年かけて制作してもらったそう。高橋氏が草間弥生の作品をコレクションしたときに人生に一条の光が射し込んだと思ったエピソードがテーマになっています。同展では残念ながら撮影禁止だったのですが、草間彌生の作品も展示されているのでしっかり目に焼き付けてくださいね。
 

BIEN《Day For Night》(2019)
岡崎乾二郎《「誰だ。何をしにきた」。苔むした岩の間にさらさら音を立てる谷川の水はいつも冷たく澄んで、そのまま王の心でした。王が王なのは誰も来ないから。来ないかぎり王は王としてミズナラの洞に座り続ける。何千年も生きたろう巨木が立ち並び、その葉の茂みが空を覆う。足元は絨毯でなく茨や葛ら、朽ち葉や枯れ枝。白い薄明りが道を示し王子をここに連れてきた。「あなたへ伝える」、何を伝えるのか。私が口を開いた途端、あなたはもう王ではない。静かだった森がごうと唸り声をあげる。》(2016)
村山悟郎《学習的ドリフト(カラー/モノクローム)あなたがこの作品を見る順序を、わたしは制作の手順としてつくりなおす。》(2014)

淡い色彩に惹かれたこちらの作品は、村山悟郎によるもの。一番上のラインを決めた後、一定の法則で下のラインが決定される理論を応用して描かれています。
 

もう一人のコレクターは匿名のA氏。「WHAT」2階の展示スペースでは、2001年からA氏がコレクションしている奈良美智の作品が展示されています。80年代から90年代にかけての作品が中心。
 

《Slash with a Knife》はA氏が初めて購入した奈良作品。描かれている女の子から感じられる闘争心に惹かれ、見るたびに勇気をもらっているそう。これ以降、自分の人生と照らし合わせながら奈良の作品を集めてきたといいます。
 

奈良美智《悟空岩木山遠望》(1995)
奈良美智《Rock and Roll(アートカー)》(2004)

A氏のコレクションは全て奈良美智の作品。あの有名な「女の子」が登場する以前の作品も展示されているのでそちらも注目ポイントです。なお、A氏のコレクション展示は、前期(12月12日〜3月21日)と後期(3月23日〜5月30日)で作品の入れ替えを行うそうなので注意してくださいね。
 

「WHAT」1階の出口付近ではグッズ販売も行われているので、記念に何か購入するのも良いですね。
 

アートを堪能した後は「WHAT CAFE」で一休み

たっぷりアートを鑑賞した後は、「WHAT」から徒歩3分ほどの場所にある「WHAT CAFE」で休憩するのがおすすめ。日本のアート業界の未来を担うアーティストたちの作品が常時数十点展示されているアートカフェです。公式サイトでは、出店アーティストの公募も行われる予定。
 

人気店のカレーや生パスタ、ボリュームのあるサラダなどの食事メニューもあるので、カフェ・ランチ利用も可能ですよ。

 

まとめ

今回は天王洲にオープンしたコレクターズミュージアム「WHAT」の様子をレポしました。

コレクターズミュージアムは、コレクターの視点を通してアートを鑑賞できるのが面白いです。それぞれのコレクターがどんな想いで作品を集めていったのか考えながら鑑賞するのも一つの楽しみ方ですね。

また次回の展覧会にも足を運びたいと思います。
 


WHAT(ワット)

住所:東京都品川区東品川2-6-10
開館時間:11:00~19:00(最終入場 18:00)
入場料:一般 1200円 / 大学生・専門学校生 700円/高校生以下 500円

https://what.warehouseofart.org/

WHAT CAFE(ワットカフェ)

住所:東京都品川区東品川2-1-11
営業時間:11:00 – 18:00(定休日なし)

https://cafe.warehouseofart.org
Instagram:@whatcafe_terrada